グラップラー簿記の資産形成

帳簿上最強の生物を目指す男のドタバタ資産形成奮闘記です。

ガイアの夜明けを見て思ったこと ~白い牛乳の黒い闇~(ただそれ言いたいだけだろ)

 毎週火曜日夜10時といえばガッキー主演のムズキュンドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」ですが、昨晩は同時間帯に放送されているガイアの夜明けを見ました。番組タイトルは『巨大規制に挑む!~明かされる「バター不足」の闇~』。

 行政だとか既得権益に不信感を抱く人はすぐ釣られてしまうようなタイトルですね。身近なニュースである「バター不足」と普段の生活ではよくわからない「規制≒既得権益」にどのような関係があるのか、知的好奇心を煽るテーマですが本当に事実を正しく伝えられていたのでしょうか。。。

 

 今回の放送で最も強く感じたことは「メディアの印象操作の上手さ」でした。番組を見た人の感想は『#ガイアの夜明け』でTwitter検索すればわかりますが概ね下記の通りでした。

①バター不足の元凶は農協(ホクレン)、国の規制によるものである

自民党MMJのように規制改革を推進すべき

③農協はヤクザ、日本の農業をつぶす

 このような感想を抱いたのであれば番組制作者の思うつぼでしょう。いや、番組制作者ではなく今回の構想者、企画者の思うつぼでしょう。制作者はあくまで企画立案者のテーマに沿って番組制作をすると思うので。

 

 ちなみに僕は酪農家でもないし、農協職員でもないです。ただ、あまりにも農協の描かれ方が悪意に満ちていたので少しばかり援護射撃をしたいと思います。

 先に断っておきますが、間違っていることを書いていたら申し訳ございません。まぁテレ東もあそこまで印象操作する番組を堂々と放映しているのでこんなブログはご愛嬌ですよね…。

 

【①バター不足の元凶は農協(ホクレン)、国の規制によるものである】

 半分正しく半分間違っています。バター不足は二面性を持っていて非常に難しい課題です。バター不足を解決するのは簡単です。海外からバターを輸入すればいいだけです。ではなぜそれをしないのか?国内の酪農が壊滅するからです。

 海外産のバターは輸入経費を加味しても国内産バターより格段に安いです。そのようなバターが大量に入ってきた場合、国内の生乳がダブつき価格破壊が起こり酪農家の収入減に繋がり、廃業する酪農家が増加するでしょう。

 現在は、輸入者と輸入量を制限しているので無秩序に安いバター入ってくることはありません。※厳密にいえば高関税を支払えば輸入は制限量以上に輸入できますが、価格的メリットがないので普通行われません。

 番組では国産バターの流通を農協(ホクレン)がコントロールし、国民にバター不足感を抱かせているようにみせていましたがそんな単純な話ではありません。バター製造者(明治、雪印、森永、よつ葉)での売り渋りや、卸売業者での在庫の抱え込みもあります。

 番組中で農協(ホクレン)職員が「バターが山のように置いてあったら誰も買わない」と言って(言わされて?)いましたが、この一言で「ホクレンがバターの流通を牛耳っている」なんて思ってしまうのは短絡的すぎます。メディアの威力を思い知らされます。

 「〇〇が大量に置いてあったら誰も買わない」という文章の『〇〇』になにか入れてみてください。食品だろうがおもちゃだろうがたいてい当てはまると思います。あの農協職員は「一般論」を述べたにすぎません。それに、農協職員ではなく卸売業者が発言していたら「卸売業者はクソ!」とかなるだけだと思います。

 

【②自民党MMJのように規制改革を推進すべき】

 改革されるべき規制、守り抜くべき規制があり規制改革に対して個別の正解はあっても十把一絡げに批判してはいけないと思います。農協組織は解体、改革すべきなのか。僕は米や野菜などはわかりませんが、酪農業については現在の「指定団体」という組織は解体すべきではないと思います。

 この『指定団体』、正確には『指定生乳生産者団体』がどのような組織か簡単に説明すると、『生乳の安定的流通を担っている組織』と言えます。全国に点在する酪農家から生乳を地域別に集め、一括して乳業メーカーへ売り渡しています。特に小規模の酪農家は個別で乳業メーカーと価格や条件の交渉をする余裕はなく、販売や流通を委託することで生産に集中できます。

 番組内ではこの指定団体から様々な手数料を取られていると嘆く酪農家を映していて、Twitterでもこの手数料は批判の的でした。批判する前に、この手数料がどのように使わているか知っているのでしょうか。僕は知りませんので批判もできないし逆に肯定もできません。農協を維持するためにもちろん経費はかかりますし、生乳の流通がタダで行われているわけがありません。手数料の行方を知らずして批判するのは間違っていると思います。逆に手数料が合理的に、有意義に使われていることがわかれば生産者は納得すると思います。

 聞きなれない企業名ですが「MMJ(ミルクマーケットジャパン)」はこの生乳の流通規制を壊そうと最近注目されている企業です。指定団体を通さずに酪農家と乳業メーカーを結ぶことを目的としています。ウリはずばり「指定団体よりも高く買い取る」ことです。MMJの社長は自信ありげに高く買い取れることを主張していましたが、MMJの規模が拡大すればするほど、この「高く買い取る」ことはできなくなります(詳しい説明は省きます)。

 硬直化された農協は改善すべきだとは思いますが、もしいま解体したら酪農業は大混乱に陥ります。その混乱はMMJには到底解決できません。とはいえ規制がんじがらめもよくないと思うのでMMJのような存在も必要かもしれません。正解はわかりません。

 

【③農協はヤクザ、日本の農業をつぶす】

 完全にメディアの印象操作です。僕も農協の実態がわからないのでなんとも言えませんが、少なくとも農業をつぶすために存在してるわけじゃないと思います…。

 いま農業が衰退している理由は様々だと思います。少子高齢化による後継者不足、TPPへの不安(トランプ氏の公約で漂流してますけど)、消費者による海外産農産物の安物買い、etc

 1時間弱の番組内で農協職員が何回登場しましたか?あなたが直接農協職員と話したのですか?取材の一部のみが切り取られている印象を受けませんでしたか?番組の内容を鵜呑みにしてしまうと思考停止します。

 

 酪農業に対する問題提起なのか、メディアの印象操作に対する批判なのかよくわからなくなってしまいましたが、今回の放送をみて上3つのような感想を抱いた人は再度考え直してほしいです。

 考え直したうえでやっぱり農協はクソ!という結論に至るのは構いません。とにかく、メディアから一方的に受けた情報だけで物事を判断するのは危険ですので気を付けましょう!もちろん僕も。

酪農の明るい未来を願って。。。